はじめに ― オフショア金融商品の相続の基本
こんにちは。ブレインシードオフショア研究所の開田晋作です。
オフショア金融商品は、契約中は長期の資産形成や資産保全の手段として魅力ある手段の一つですが、「相続」という局面に立ったとき、その制度の複雑さから、国内の金融商品とは異なる点が多く、非常に厄介な存在へと変貌します。
「海外にある資産だから日本の相続とは関係ない」と考える方もいますが、日本の居住者は全世界の財産が相続税の対象となります。香港やシンガポールなどで契約したオフショア金融商品も、当然ながら日本の法律に基づいて処理しなければなりません。
当所は、日本国内で数少ないオフショア金融商品の契約手続きに特化した行政書士の在籍する研究所です。オフショア投資に関するご相談は、いつでもお気軽にお問い合わせください。
保険付き商品でも投資商品として評価される事がある
RL360°やインベスターズトラスト(Investors Trust)のような商品は死亡保障機能を備えているものがあります。しかし実際には投資商品としての性格が強く、相続時の評価方法は「保険商品」として扱うか「金融商品」として扱うかで分かれます。
※RL360°について詳しくはこちらの記事をご参照ください
※インベスターズトラストについて詳しくはこちらの記事をご参照ください
1.税務評価の相違
同じ商品であっても契約内容や拠出方法によって、税務上の評価が変わることがあります。生命保険契約に準じて処理される場合もあれば、純粋な投資商品として扱われる場合もあり、同一商品だからといって画一的な財産評価はされておらず、全て個別案件として処理されるようです。
2.思い込みが生むリスク
「保険だから非課税枠があるはず」と思い込むと危険です。実際に、オフショア金融商品に国内保険と同じ優遇制度が適用されるとは限りません。誤解に基づいて遺産分割を進めると、後から修正申告や追徴課税に直面することになります。この判断を誤れば、相続財産の評価を必要以上に高く見積もられ、余計な相続税負担が生じるおそれがあります。
オフショア金融商品が相続財産に存在する場合、オフショア金融商品の仕組みに通じ、かつ相続制度にも精通した士業に相談することが望ましいといえます。
受益者指定をしていないと「現地裁判」が必要
契約している商品に、受益者を設定していない場合は要注意です。
オフショア金融商品の多くは現地法に基づいて運営されており、受益者指定がない場合は「プロベート(Probate)」と呼ばれる裁判手続きが必須となります。
1.プロベートとは何か
プロベートとは、亡くなった方の遺産をどのように相続人へ分配するかを現地裁判所が監督する手続きです。日本の家庭裁判所における遺産分割調停のような性質を持ちますが、海外ではより時間とコストがかかるのが一般的です。
- 相続人の確定:戸籍や出生証明などを現地語に翻訳し、正当な相続人であることを証明
- 裁判所の認可:遺産を誰がどの割合で受け取るのかを裁判所が決定
- 遺産の凍結:手続きが終了するまで、資産には一切アクセスできない
このプロセスを経ない限り、相続人であってもオフショア金融商品の資金を引き出すことはできません。
2.期間と費用の負担
プロベートには通常 2〜3年の時間 がかかります。現地の法制度や裁判所の混雑具合によっては、さらに長引くケースもあります。
また、相続人は現地弁護士を依頼しなければならず、弁護士費用や翻訳費用など数十万円〜数百万円単位のコストが発生します。結果として、相続財産の一部が手続きコストで目減りすることになるのです。契約している商品に、受益者を設定していない場合は要注意です。
3.家族に及ぶ影響
この間、遺族は資産が凍結されたまま生活を続けざるを得ません。例えば、相続財産の中でオフショア金融商品が大部分を占めている場合、相続人は当面の生活費や納税資金を確保できず、二重三重の負担を背負うことになります。
実際に「父が契約していたオフショア商品に受益者指定がなく、現地で2年以上も手続きが止まったまま」という相談は少なくありません。
4.受益者指定の有無を確認することの重要性
受益者指定があれば、通常は裁判手続きを経ることなく、契約者死亡後に直接受益者へ資産が移転されます。つまり、受益者を指定するかどうかで相続の難易度は天と地ほど違うのです。
一度受益者指定をしても、家族構成やライフステージの変化に応じて見直しが必要です。結婚・離婚・再婚・子どもの誕生など、人生の節目ごとに受益者の記載が最新化されているか確認することが欠かせません。
死亡時の時価評価額と解約ペナルティの乖離
相続税は「死亡時点の時価」で評価されるのが原則です。
しかし、オフショア金融商品には中途解約の際に大きな解約控除(ペナルティ)が設定されているため、この「時価評価」と「実際に受け取れる額」との間に大きな乖離が生じやすいという特徴があります。
1.不合理な乖離の典型例
- アカウント評価額:1,000万円
- 解約後の受取額:700万円
- 課税対象:1,000万円
このケースでは、相続税は1,000万円を基準に計算されます。しかし相続人が実際に手にできるのは700万円にすぎません。つまり、「存在しない資産」に対して課税されるのと同じ状況が発生してしまうのです。
2.評価額の算定ミスが招くリスク
相続の場面では「どの金額をもって時価とするか」を見極める必要があります。
ところがオフショア金融商品の評価方法は、国内金融商品のように単純ではありません。途中解約時の評価額、死亡時に支払われる金額、ファンドの基準価額などが複雑に絡み合い、素人判断や慣れていない専門家の判断では誤った評価額が申告される恐れがあります。
もし過大評価をすれば、相続人は本来より多くの税を支払うことになります。逆に過少評価で申告すれば、後から税務調査で追徴課税となり、余計なペナルティが課されることもあります。
3.オフショア金融商品の特殊性
オフショア金融商品は国内の生命保険や投資信託と比べて、評価体系が非常に独特です。
- 中途解約の際に多額の手数料がかかる
- 契約者死亡時に加算される死亡保障がある場合もある
- 商品ごとに評価額の算出根拠が異なる
このため、相続人や一般的な士業が契約書をざっと見ただけでは正しい評価を算出できない場合が多いのです。
4.専門家の関与が不可欠
こうした乖離を適切に処理するには、オフショア金融商品と相続制度の両方に精通した専門家の関与が不可欠です。契約内容を細かく分析し、どの金額が「時価」として妥当なのかを判断できなければ、相続人が不必要に損をすることになりかねません。
共同名義の落とし穴
「ジョイントアカウント(共同名義)にすれば、法定相続人以外にも合法に、しかも誰にも気づかれずに資産を残せる」と、無責任な紹介者から説明を受けることがあります。しかし、これは大きな誤りです。
1.共同名義とは何か
共同名義とは、ひとつの契約口座に複数の名義人を登録する仕組みを指します。オフショア金融商品の場合、契約者(Policy Holder)を複数人設定することで、どちらか一方が亡くなっても契約自体は存続する形が採用されることがあります。
海外では「ジョイントテナンシー」と呼ばれ、確かに現地の制度上は「生存者に自動的に権利が移転する」仕組みを持つ場合もあります。
この仕組み自体は、英米法圏では比較的一般的であり、相続回避の手段として利用されることがあります。
2.日本の税法との決定的な違い
問題は、日本の相続税法はこの「ジョイントテナンシー」の考え方を採用していないという点です。
日本では、名義ではなく実質的な拠出者が誰かで課税関係を判断します。
したがって、名義上は共同名義であっても、実際に資金を拠出したのが被相続人であれば、その全額が相続財産に含まれます。
3.誤解が招くリスク
共同名義を「相続人以外にこっそりと財産を残せる裏技」だと信じて契約してしまうと、以下のリスクが発生します。
- 税務調査で否認され、追徴課税や加算税を課される
- 「隠し資産」と見なされ、家族間のトラブルや不信感につながる
- 相続人以外の名義人が「贈与を受けた」と扱われ、贈与税課税を受ける場合もある
つまり、名義を利用したスキームは「節税」ではなく「課税リスクの増大」にしかなりません。
4.本当に役立つケースはほぼない
海外のIFAや無登録業者の中には、「共同名義なら国内の相続手続きに影響されずに資産を移せる」とセールストークをする人がいます。
しかし、現実には日本の税務当局は「拠出者=実質的な所有者」という視点で厳格に判断します。共同名義にするメリットはほとんどなく、むしろ後々の調査や申告で余計な負担を招く可能性が高いのです。
共同名義は日本人にとって馴染みがなく、新鮮に見えるので一見便利に見えますが、日本の相続税法の下ではむしろトラブルや追加課税の火種です。安易に「海外では認められているから」と信じ込むのは危険であり、制度の違いを理解した上で判断する必要があります。
適切な相談先とは
1.推奨される相談先
オフショア金融商品が絡む相続は、国内の相続よりもさらに複雑です。
したがって、オフショア金融商品の特性と相続制度の双方に通じた士業に相談することが適切です。
- 弁護士:国際相続や相続人同士での争いが起きた場合に依頼
- 税理士:相続税申告の際に依頼
- 司法書士:不動産や登記が絡む際に依頼
- 一部の行政書士:オフショア金融商品の契約整理や制度理解が必要な際に依頼
特に、オフショア金融商品は制度や契約特性を知らないと正確な財産評価ができません。その結果、相続人が不必要な税負担や事務負担を強いられるケースがあるため、専門知識のある士業に依頼することが不可欠です。
2.避けるべき相談相手
一方で、次のような相手にオフショア金融商品が絡む相続の相談をすることは非常に危険です。
- 金融庁に登録のない、無資格のオフショア金融商品の紹介者
- 「投資○○士」「相続○○士」など、国家資格に見せかけた民間資格保有者
- FP(資産形成の相談は可能だが、相続税申告・登記・紛争解決はできない)
- 高齢の紹介者(特に60歳以上)。問題発生時に紹介者がすでに亡くなっていた、あるいは事理弁識能力を失っていた等、高齢の紹介者はリスクだらけ
実際に「紹介者に連絡が取れず、解約や相続手続きが全く進まない」という『オフショア難民』は後を絶ちません。
当所は、日本国内で数少ないオフショア金融商品の契約手続きに特化した行政書士の在籍する研究所です。オフショア投資に関するご相談は、いつでもお気軽にお問い合わせください。
まとめ ― 生前の準備が不可欠
オフショア金融商品は、
- 日本の相続税法(全世界課税)
- 現地法(プロベート手続き)
が複雑に交錯し、相続時に極めて難しい処理を要する財産です。
「自分が契約しているのだから大丈夫だろう」と思っていても、相続が発生した時点で手続きを進めるのは残された家族です。契約者本人が手を打たないままに亡くなってしまえば、遺族は時間・費用・精神的な負担を一度に背負うことになります。特にオフショア金融商品は、国内の金融商品と比べて制度が独特であるため、遺族が急に対応できるものではありません。
だからこそ、生前に準備をしておくことが最大のリスクヘッジになります。受益者指定が適切にされているかどうか、共同名義を安易に利用していないか、解約控除や死亡時評価の仕組みを理解しているか。そして何よりも、資産の一部を国内財産に振り替えておくことが、相続時の混乱を防ぐ現実的な対策になります。
オフショア金融商品は契約中こそ魅力的に映りますが、相続という局面を迎えれば「厄介な財産」へと姿を変える可能性が高いのです。契約者自身が元気なうちに整理・準備を進めておくことで、残される家族が不必要な苦労を背負わずに済みます。
当所は、日本国内で数少ないオフショア金融商品の契約手続きに特化した行政書士の在籍する研究所です。オフショア投資に関するご相談は、いつでもお気軽にお問い合わせください。
相続リスク自己診断チェックリスト
簡易診断
オフショア金融商品をお持ちの方は、次の項目に☑を入れて確認してみてください。
- □ 受益者を指定している(未指定の場合、現地で裁判手続きが必要となり、2〜3年資産に触れられないリスクあり)
- □ 解約控除(中途解約時のペナルティ)を把握している(知らないと課税額と受取額の差で損をする可能性あり)
- □ 死亡時の評価額がどの金額で算定されるのかを把握している(アカウントバリューと解約後の実際の手取り額に乖離があることを理解している)
- □ 共同名義の扱いを理解している(相続人以外を名義に加えても、拠出者基準で相続財産に含まれることを理解している)
- □ 契約書や最新のステートメントを家族が把握できる状態にしている(存在が分からなければ相続手続きが遅れる)
- □ 相談相手を誤っていない(弁護士・税理士・司法書士・行政書士など士業に依頼しており、無資格コンサルや高齢の紹介者には頼っていない)
- □ 紹介者やIFAと継続的に連絡が取れる(高齢の紹介者や退職・廃業した紹介者だけに頼っていない)
- □ 生前整理の方針を検討している(資産の一部を国内の現預金や不動産へ振り替えるなど、相続発生後に備えて準備している)
判断目安
- ☑が7〜8個 → リスク管理は十分できている
- ☑が4〜6個 → 専門家に早めに相談すべき
- ☑が0〜3個 → 危険水域。直ちに士業の専門家に相談を



